思いついたことを伝えたいブログ

2016/04/10

退職した会社が給料を払わないときは労働基準監督署で相談

会社を自己都合で退職したとき、中には給料を支払わない会社経営者もいます。普通に働いていれば滅多にないことだと思いますが、時としてこのようなトラブルに遭遇してしまうことがあるかもしれません。今まで、そう思って仕事をしてきました。

しかし、ついにそんな事態に遭遇したのです。退職後に給料が払われないなどという経験は社会人になって初めてでした。未払い賃金・給料は何としても回収したいと考えていました。こんな時にどのように対処すればいいのか、いろいろと悩んだことがあるので、その時の事を書いてみます。




この会社は10人足らずの従業員数でしたが、自分のやりたい仕事が出来ると思い、転職によって入社を決めました。社長との直接面談でしたが、3カ月間は試用期間で、その間は、社会保険は「なし」という条件になりました。また、駐車場代は求人票の通り労使折半となり、駐車場を借りるための前賃料や敷金は会社が先払いしました。
  
社長との取決めの席には、管理職の人が呼ばれ同席の上、挨拶を行いました。私は1週間後に出社することになりました。このとき、雇用契約書の締結を口にしなかったことが、後に未払い賃金の全額回収を困難にさせることになったのです。
  
労働基準法第15条では、労働者の雇入れに際し、使用者は労働条件を書面により明示すべきことを義務づけています。書面による明示が義務付けられている事項とは、

・労働契約の期間
・就業場所、従事する業務
・始業・終業時刻
・所定労働時間を超える労働の有無
・休憩時間
・休日・休暇
・賃金および支払の方法、時期
・退職に関する事項 

さらに、労働条件の明示義務違反については罰則として30万円以下の罰金があり(労働基準法1201号)、明示された労働条件が事実と相違する場合は、労働者側に労働契約の即時解除権が認められる(労働基準法152項)。
  

私は入社した日に管理職の人に雇用契約書の事を尋ねました。すると「雇用契約書なんか無いし書いたこともない」と言われました。疑問でしたが、でも仕方がないと思いました。とりあえず会社を信用して働くしかないと考えました。

しかし、1カ月も経たないうちに、会社の仕事の内容や進め方、さらにそこの会社で働いている人との考え方が合わなかったため、退職することにしました。
  
会社の社長には、労働基準法の規定に沿って希望退職日の2週間前に意思を伝えましたが、「やる気がないのなら、今日で辞めてもらっても構わない」と言うので、即日退職しました。出勤した日数分の給料については、日割りで翌月の給料日に支払われると思っていました。
  
しかし、翌月の給料の指定日になっても給料は支払われませんでした。給料支払い日の翌日に会社に連絡してみると、「今、計算をしているところだから、さらに翌月の給料日には払う」と社長は言いました。しかし、さらに翌月になっても支払われることはありませんでした。
  
なぜ支払が遅くなっているのか、再度連絡をとると、「短期間で辞めたから、日割り賃金は最低賃金で計算しようと思っている。税理士と相談している」と言い出しました。
  
これは困ったことになったと思いました。入社を決めるときに、雇用契約書を結んでおけば、こんな問題は発生しなかったと思いました。
  
面接の時に取り決めた給料を取り戻すにはどうしたらいいのか・・・。この時から数カ月間にわたって迷走しました。割と役に立ったのがネットで検索した解決法でした。いろいろな方法が検索で出てきました。



 ハローワークは労働上のトラブルには関与しない 

ハローワークで紹介を受けた会社だったので、まずはハローワークに行くことにしました。奥から管理職風の人が出てきたので、事の経緯を説明しました。しかしその人は「労働紛争などのトラブルは、労働基準監督署に行ってください、そのためにあるんだから」と言われました。悪質な会社を報告したつもりでしたが、肩透かしをくらった感じでした。ハローワークは仕事を紹介するだけの所なんでしょうか。


職業安定法では、下記のように定められています。
  
職業安定法第42条では、新聞や求人雑誌等により労働者を募集する場合においては、労働条件について募集に応じようとする労働者に誤解を生じさせることのないように平易な表現を用いる等その的確な表示に努めなければならないとされている。


さらに職業安定法第65条第8項では、虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を呈示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者については罰則規定があり、「6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。」とされている。


労働基準監督署に相談 


労働基準監督署では、受付けで対応された人に事の経緯を説明し、受付け票にも記入しました。そこで改めて驚かされたのは、「求人票」と「実際の雇用条件」は違うという考え方を労働基準監督署が持っているという事です。例えば、大手求人ポータルサイトなどで応募して面接に行くと、ほとんどの会社は求人広告の通りだと答えていましたから、不思議に思いました。

余談ですが、昔、夜遅くまで働かせる会社で仕事をしていました。社員の間では、「これは労働基準法違反じゃないのか」と不満を漏らしていました。しかし「労働基準監督署に密告するとクビになる」という空気が社員から中間管理職の間でありました。だから、誰ひとりとして労働時間について会社に文句を言う社員は居ませんでした。「嫌なら辞めろ」という体質でした。

しかし、今回の件はすでに退職しており、賃金債権の回収をしなければなりませんから、むしろ、実際に自分がどこまで出来るものなのか、チャレンジする精神で問題解決に当たろうと考えました。 


労働基準監督署の受付票には、窓口対応の人からいろいろと聞かれました。いつから働き、未払い給料の額などを記入しました。

窓口対応の人が言うには、「会社に問題があれば、つきつめて調査を行うし、違法性が発覚するようであればさらに踏み込んだ処分を行うこともある」と言っていました。なかなか期待が持てると思いました。しかし、その期待は後で消え去ることになるのです。 


賃金の支払いが遅れると即法律違反 


さらに労働基準法では、会社の指定した支払日に賃金が支払われない場合、即法律違反となると説明されました。そして、本人による督促によって会社の対応を把握するために、まず退職した会社に問い合わせを行い、給料が手渡しならば実際に会社に行き、事情が聞くようにと指示を受けました。


その会社では今時めずらしく、給料は手渡しでした。あまり気が乗りませんでしたが、まず退職した会社に、「これから給料を取に行きます」と電話を入れました。会社の事務員は困った様子で「給料の事は社長がやっているし、来てもらっても社長はいませんよ」と言っていました。 


それでも私は、指示通りに会社を訪問しました。ドアを開けると事務所には数人の社員が居ました。不安だったのは、「私の事を採用した覚えもないし、知らないから出て行ってくれ」などと言われなかったことが、唯一の救いでした。


事務員に「給料が出ているはずですか、どうなっていますか」と聞くと、事務員と管理職の人は「給料は社長が計算しているからまだ出ていない」という回答でした。さらに驚いたのは、「急に脳梗塞で入院してしまった」、というのです。あれだけ飲み歩いて外車を乗り回していた社長でしたし、電話口でも普通に会話をしていたのです。

しかし、決定的な疑問が出てきたのです。脳梗塞で入院するほどの症状ならば、他の社員の給料も渡せるはずがないのですが、社員たちは、しっかりと給料を受け取っていたのです。 


落ち着かない日々が続きましたが、やっと労働基準監督署の担当になる人から連絡がありました。私は、担当者に会社の違法性などを説明しました。労働基準監督署は場合によっては刑事事件として立件も視野に入れて会社に立ち入って違法行為などを全て調査するのかと思ったのですが、今回は請求のあった「未払い賃金」の事案しか対応しないというものでした。少しがっかりしました。 


担当者は、会社経営者と連絡を取り、数日後に面談を行いましたが、最低賃金で計算しているという回答でした。さらに驚いたのは、「駐車場代の損害金を差し引く」というものでした。駐車場代は、労使折半であり、求人票にも記載されていましたし、その時の求人票の写しを労働基準監督署に受付票と一緒に提示しています。経営者の言っている事が虚偽であることを、繰り返して労働基準監督署の担当者に説明しても、聞いてもらえませんでした。

担当者は、「内容に不満があるなら裁判しかないですね」と、淡々として答えるのみでした。その後も不満があるなら「裁判しかありません」「裁判しますか」という言い方を何度かしていました。


さらに担当者は、会社の違法性を追及して裁判を起こしたとしても、確証となる雇用契約書も無いようでは、満額の回収は難しく、概ね7割程度の回収で落ち着くことになることが多い、という回答でした。 


しかし、こんな判例もありました。

労働条件の明示がない場合に、何をもって労働契約締結の際の労働条件とみるかについては、公共職業安定所の紹介により成立した労働契約の内容は、当事者間において求人票記載の労働条件を明確に変更し、これと異なる合意をする等、特段の事情がない限り、求人票記載の労働条件のとおり定められたものと解される(千代田工業事件昭58.10.19 大阪地裁決定)。 


労働基準監督署の立場として分かったことは、労働した日数分の賃金を支払わないのは労働基準法違反であるから、その事については是正させるのです。しかし、雇用契約書も交わしていないし、どのような取決めだったのかも分からない。給料を支払うのは会社経営者だから、いくらで計算するのかについては経営者の判断に委ねるしかないのです。但し、最低賃金を下回ることはできません。

もし、駐車場代と敷金も給料から差し引かれると、回収金額が約3割減ることになるのです。私は、法テラスや簡易裁判所でも相談することにしました。 




法テラスで相談 


法テラスでは相談時間は30分です。受付け票に内容を記載した後、個室に入ると担当弁護士が座っていました。今回のような事例を受けたことがなかったのか、弁護士は六法全書を開き始めました。

未払い賃金については、本人から会社宛に「書面」で督促を行うようにと説明されました。但し、書面の内容については「内容証明」にすると、けんか越しのようになるので、まずは「通知書」とか「請求書」という内容で出した方が良いと言われました。しかし、そんな内容で通じる相手ではないのです。 


簡易裁判所で相談 


自分で督促状を会社に送るという方法よりも、もっと強固かつ早急に回収したいと考えていましたので、簡易裁判所に行ってみました。窓口に行き、「未払い賃金の督促方法を教えてください」と言えば、丁寧に教えてくれます。

支払督促の方法 


書面で支払督促を行います。費用は3千円程度ですが、デメリットとして相手(会社)から異議申し立てがあった場合、通常の訴訟手続きに移行します。それでもとことんやるかどうか悩みどころです。

用意する書面は下記の①から⑤ですが、①から③については簡易裁判所で用意してくれます。

    請求の趣旨及び原因
    当事者目録
    支払督促申立書
    代表者事項証明書(自分で法務局へ行って取る)
    官制ハガキ(自分で用意)


労働基準監督署による是正指導と督促行為は同じではない


私が簡易裁判所で支払督促を行うことを検討していると伝えると、どちらかひとつにしてほしいと言われました。つまり自分自身で督促行為を行うなら、労働基準監督署は関与しないということです。労働基準監督署の立場としては、監督署が相談を受けた場合は、まず監督署が未払い賃金を含めた違法行為を是正するのが役目だからです。

だからと言って、労働基準監督署に強制力はないのです。

もし、労働基準監督署による是正指導によっても未払い賃金が支払われなかった場合は、自分で督促状を出すなどにより未払い賃金の回収を行うしかありません。裁判を起こし、何らかの判決が出たとしても会社経営者が支払わない場合には、強制執行により会社の口座を差し押さえて賃金を回収させるしかありません。

労働基準監督署の担当者から連絡が入りました。「この金額で了承するなら、1週間後に振り込むと言っています」というものです。回収すべき金額の7割程度しかありません。そこまで振込日を指定して約束するのなら、もうそれでいいと思い了承しました。

しかし、その日に振り込まれることはありませんでした。また、労働基準監督署の担当者に連絡を取り、状況を伝えました。結局、さらに1週間後に振り込まれました。

ネットでは労働基準監督署の監督官には司法警察権がありますから、あまりに悪質な場合は司法処分を行う事も可能で、一定の強制力をもって法違反に対応することが可能なはずです。

このようなトラブルを回避するには、採用された時に必ず雇用契約書があるのか結ぶのか確認すべき事なんです。これは雇用主に対して言いにくい事かもしれませんが、後々になって苦労するのは自分だからです。しかし、その時に雇用契約書がなければ入社を辞退すると言えるかどうか。苦労して転職活動を続け、やっと採用になった会社が雇用契約書などない、と言われたらどうするのか。日本社会はまだまだ厳しい様相です。

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